コラム

COLUMN

根っこのむし歯にご用心しましょう!

近年「8020」といわれるように、高齢になっても多くの歯を残せている人が増えてきていますが、それにともない新しいタイプのむし歯が増えてきております。

 

「根面う蝕」(根面のむし歯)といい、歯周病や加齢などにより歯ぐきが下がり露出した歯の根がむし歯になりますす。

まるで家の土台を食い荒らすシロアリのよう、根面のむし歯は気づかぬうちに進行しがちで、せっかくいままで残せていた歯を失うことになりかねません。

 

最近の疫学調査では、50代以上のシニア世代のかたのお口に見られるようになってきており、70代の65%、80代の70%がなっているといわれるほど増加しています。

 

なぜ、根面がむし歯になるのでしょう?

 

そのわけは、むし歯は、お口のなかの細菌の出す酸が歯を溶かすことで起こります。

歯に付着したプラーク(細菌のかたまり)のなかに細菌の出す酸が充満し、それと接した面から菌が溶けていきます。

なので、歯みがきをし、プラークを溜めないようにするのですね。

歯はおもにエナメル質と象牙質、神経(歯髄)からできています。

歯の噛むところはエナメル質と象牙質の二重構造。歯の根は象牙質がおもです。

 

象牙質のほうがエナメル質よりやわらかく、酸への抵抗力も弱いのですが、それだけむし歯になりやすくなります。

これが根面がむし歯になりやすい理由のひとつです。

 

根面のむし歯、じつは私たち歯科医療者にとっても悩みの種です。

頭を悩ませている厄介な6つの理由があります。

 

① 早期の発見が非常に難しい

噛むところのむし歯はできはじめは白く濁るので、患者さんにもそれとわかります。ところが、根面の象牙質はもともと黄みがかっていて、できはじめのむし歯は白く濁りません。うっすらと色が変化する程度なので、残念ながら専門家の目でも最初期の発見は非常に困難です。

 

② 自覚症状がほとんどない

根面のむし歯には、しみる、痛いといった自覚症状はほとんどありません。そのため知らないうちに進行しがちで、気づいたときには歯を残すことが困難になってしまうケースがよくあります。

 

③ セルフケアが難しい

根面は歯ブラシが届きにくく、みがき残しが多くなりがちな場所です。当てているつもりでも当たっていないということもよくあります。

 

④ 象牙質は酸に弱い

歯の噛むところを覆うエナメル質より酸に弱く溶けやすい。

 

⑤ 治療が難しい

歯の噛むところのむし歯の場合、進行している場合、病変部を除去して進行を止めてから、詰め物や被せ物を入れる。

というのがスタンダードな治療ですが、根面のむし歯は、進行している場合、うかつに器具を当てると歯が折れる危険があったり、むし歯が歯ぐきで隠されたところに広がっているために器具が物理的に届かず、むし歯部分を除去するのも詰め物をするのも困難なことがあります。

 

⑥ 治療後も長持ちしにくい

・そもそも歯周病により歯が植わるあごの骨が減っている

・そのため歯ぐきより上に出ている部分が増えてバランスが悪くなっている

・むし歯部分を除去したぶん根の歯質が減っている

・歯の神経が取り除かれている

などが治療した歯も残念ながらその後長持ちしにくい理由となります。

 

根面のむし歯の治療を受けた歯は以前よりずっと弱くなっていますので、ぜひ大事にケアをしていただければと思います。

 

 

 

まとめ

 

根面のむし歯の進行抑制と予防は、歯科の定期受診が欠かせません。

定期的に経過観察を受けていただきながら、むし歯の原因究明と、食生活・歯みがきの改善、フッ素塗布などを通じて進行抑制に努めていきます。

根面が露出する原因は歯ぐきが下がることですが、そのいちばんの理由は歯周病です。

歯周病予防のためにも定期受診を欠かさないようにしましょう。