『歯周病菌』と聞くと、なんだか特別な悪い菌のように思うかもしれませんが
実は、私たちの口の中には、常に数百種類以上の細菌が住んでいます。
その中には「歯周病の原因になりやすい菌」(例:P. gingivalis など)も含まれています。
普段はバランスが保たれており問題ありませんが、歯磨き不足や免疫力低下で悪い菌が増えやすくなります。
条件次第で悪者に変化してしまうのです。
普段は静かに、歯周ポケットの中に潜んでいる
歯周病菌はお口の中にいつもいる常連さん。
健康な口の中にもいますが歯みがきでしっかりプラークを落としていれば大人しくしています。
歯周病菌は「嫌気性菌」という酸素が苦手な菌です。
歯と歯肉のすき間の歯周ポケットは空気が触れにくく、歯周病菌にとって快適な隠れ家なのです。
そこで歯周病菌は、歯周ポケットに溜まってるプラークを活用して他の細菌たちと一緒に「バイオフィルム」という細菌膜をつくり、
外敵(うがい薬や免疫細胞)から身を守ろうとします。
このバイオフィルムが歯周病を進行させてしまうのです。
歯ぐきをじわじわと攻撃する
歯周病菌は歯周ポケットの中で毒素や酵素を出して歯茎の組織を壊したり炎症を長引かせたりします。
その結果、歯茎が腫れや出血などの症状がでてきます。どんどん進行すると歯を支える骨まで溶かしてしまい歯がぐらぐらと揺れてきます。
体の病気と仲良し
歯周病菌は、ただのお口の中の細菌ではありません。
血液に乗って全身に広がりさまざまな病気の引き金や悪化要因になります。
●心臓病、血管の病気
歯周病菌が血液に入り動脈の壁に炎症を起こすと
動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高めます。
●糖尿病
歯周病の炎症で出る物質がインスリンの効きを悪くすることで血糖コントロールが乱れやすくなります。
逆に、糖尿病があると歯周病も進行しやすいと言われています。
●認知症
歯周病があると血液中に炎症物質(サイトカイン)が増加します。
このサイトカインが脳の神経細胞を傷つけて認知症を進行させると言われています。
また、歯周病菌の毒素がアルツハイマー型認知症の原因とされる『アミロイドβ』という異常タンパク質の産生を促進すると言われています。
●妊娠トラブル(早産・低体重児出産)
歯周病菌や炎症物質が胎盤に影響を与え、
早産や低体重児出産のリスクが高まることがあります。
歯周病菌は減らすことができます!
歯周病菌は普段はただのお口の住人です。ただし油断すると全身の健康にまで悪影響を及ぼす不思議で厄介な存在です。
毎日の歯磨きを怠るだけでどんどん増えていきます。また、バイオフィルムはセルフケアではなかなか除去が難しく限界があります。
歯科医院では専用の機械を使用してバイオフィルムを除去することができます。
定期的な歯科医院での清掃が歯周病菌を減らす鍵です。
自分の歯磨きのやり方は正しいのか、歯周病になっていないかなど気になることがあれば歯科医院を受診しましょう。