コラム

COLUMN

訪問診療で見つけた小さな幸せ

 

 

歯科の訪問診療をしていると、心がとても温かくなる瞬間に出会います。

 

ある日、私たちは施設に入居されているおじいちゃんの診療に伺いました。

 

そのおじいちゃんは、普段あまり多くを語らない方で、口腔ケアのときも静かに口を開けてくださいます。

 

いつものように入れ歯の調整と口腔リハビリを終えて、「ありがとうございました」と声をかけると、おじいちゃんがぽつりとこう言いました。

 

「この前な、家族とちゃんぽん食べに行ってなぁ」

 

職員さんに聞くと、以前は入れ歯が合わず、麺類も食べにくそうにされていたそうです。

 

それが、入れ歯の調整と口腔ケア、リハビリを続けていく中で、久しぶりにちゃんぽん麺を食べることができたのだとか。

 

「うまかったなあ。」

 

その一言は、とても静かで、でもどこか誇らしげでした。

 

 

 

私たちにとっては、何気ない一食かもしれません。

 

けれど、その一口が、誰かにとっては久しぶりの“ごちそう”になることがあります。

 

 

 

訪問診療では、大きな治療をすることはあまりありません。

 

歯を磨いたり、入れ歯を調整したり、お口をきれいに保つお手伝いやリハビリが中心です。

でも、その積み重ねが「もう一度好きなものを食べられる」という、小さな幸せにつながることがあります。

 

 

 

帰り際、おじいちゃんは少し照れくさそうに言いました。

 

「これからもよろしくな。」

 

そういう言葉を聞くたびに思います。

 

 

 

お口を守ることは、ただ歯を守ることではなく、その人の“楽しみ”や“生きる力”を支えることなのかもしれません。

 

訪問診療は、そんな小さな幸せに出会える素敵な仕事なのです。

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