虫歯菌(特にミュータンス菌)は実は人類と共に進化してきた、意外にも長い歴史を持つ存在です。
今回は、虫歯菌の起源や広がりについてご紹介します。
1,自然界にいた虫歯菌
虫歯菌の代表であるミュータンス菌は、もともと自然界に存在していた乳酸菌の一種です。
この菌は糖を分解して酸を作り、植物や動物の体内でも活動していました。
しかし、野生動物には虫歯が少ないことからもわかるように、彼らの食生活では糖分がほとんどなく、菌が歯を溶かすまでには至らなかったのです。
2,人類の食生活が変えた環境
人類が狩猟採集生活をしていたころ(約10万年前)、食事の中心は肉やナッツ、野菜など糖分の少ないものばかりでした。そのため、ミュータンス菌が虫歯を引き起こすことはほとんどありませんでした。
しかし、約1万年前に農耕が始まり、穀物や果物が主食になると話は変わります。
糖質が豊富な食材が増えることで、ミュータンス菌が糖をエネルギーにして酸を生成し、歯を溶かす環境が整ったのです。
3,虫歯菌はどう広がったのか?
ミュータンス菌は、唾液を介して人から人へ感染します。この菌は赤ちゃんの口の中には存在せず、親や周囲の人からうつるのが一般的です。
たとえば、スプーンを共有したり、親が子供の食べ物を口に含んだりすることで菌が移動します。
虫歯菌はこうして「家族内」で受け継がれ、徐々に広まっていきました。
4,現代の虫歯菌との付き合い方
現代ではフッ素入りの歯みがき粉や定期健診のおかげで、虫歯を予防する手段が大幅に進歩しました。
しかし、糖質を多く含む食事が一般化した今、虫歯との戦いは終わっていません。糖分の摂取を控え、歯を丁寧に磨き、菌をコントロールすることが重要です。
虫歯菌は完全に取り除けなくても、コントロールすることはできます。
毎日の歯みがきと食生活の見直し、定期健診で虫歯にならない未来を作りましょう。